2020.12.11.

HERBS IN MY LIFE がんばる女性のヘルスケア- 女性ホルモンと上手につき合おう –

いりたに内科クリニック院長

入谷 栄一

Women’s Health

仕事、家事、育児、介護など、現代女性には 多くの役割が期待されています。 また、生活スタイルの変化から妊娠・出産の回数が減り、 1人の女性が生涯に経験する月経の回数は増えています。 こうした変化を受けて、不調を感じる女性が増え、 日々の健康管理においてもこれまでとは違った アプローチが必要になってきました。 そのカギとなるのが、女性ホルモンです。 女性ホルモンとの上手なつき合い方を身につけて、自分らしく健やかな毎日を送っていきましょう。

元気とキレイのカギは

女性ホルモンのケアにあり!

女性の心や体の健康は、女性ホルモンと深くかかわっています。 ホルモンのメカニズムや女性に起こりやすい不調の原因を知り、 効果的なセルフケアで快適な毎日を送っていきましょう。

Check List
当てはまる項目が多い人ほど、ホルモンバランスの乱れに注意が必要です。

□ 月経のトラブルがある

□ 過去に無理なダイエットをした、または現在している

□ 仕事や家庭でストレスが多い

□ 睡眠は 6 時間未満である

□ 体や手足が冷えやすい

□ 運動はほとんどしていない

□ 肌のつや、ハリがなくなってきた

女性の健康のカギを握る 2 つの女性ホルモンとは

女性は一生の様々な時期に男性とは異なる女性特有の不調が生じます。そのカギを握っているのが、女性ホルモンです。

女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つがあります。これらは脳の下垂体によりコントロールされ 、卵巣から分泌されます。2つの女性ホルモンはそれぞれ異なる働きをもち、両方がきちんとバランスよく分泌されることで規則正しく月経を迎え、妊娠・出産が可能になります。

このうちエストロゲンは妊娠を成立させるホルモンで、子宮に作用し、受精卵のベッドとなる子宮内膜を厚くさせる働きがあります。また、女性らしい体をつくるもととなり、 皮膚の潤いを保ったり、骨を丈夫にしたり、情緒を安定させたりと、幅広い役割を担って女性の健康を守っています。

女性の体調にはこれらの女性ホルモンの働きが大きくかかわっているため、ホルモンバランスが変化する思春期や更年期※、ホルモンの分泌が変動する月経前や排卵期には、不調が起こりやすくなります。

更年期…閉経をはさんだ前後5年の約10年間。 日本人の場合は45~55歳くらい。

原因を知って先回りの対処を

女性に起こりやすい不調や病気も、女性ホルモンの年齢変化によって、ライフステージごとに異なります。女性ホルモンの分泌がまだ不安定な思春期から20 代にかけては月経不順や月経痛など月経のトラブルが多く、20 ~ 40代半の性成熟期には月経前症候群(PMS)など月経にまつわる不調の他、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がん、乳がんなど婦人科系の病気も増えてきます。そして女性ホルモンの分泌が急激に低下する更年期には、のぼせ、めまい、倦怠感など様々な不定愁訴が起こりやすくなります。

また、何らかの原因でホルモンの分泌が 乱れると、不調が出やすくなります。その大きな原因の1つは、ストレスです。女性ホルモンや自律神経をコントロールしている脳の視床下部はストレスの影響を受けやすく、過度なストレスがかかるとホルモンのバランスが乱れてしまいます。

冷えもまた、自律神経の働きを乱し、血流が悪くなることで、ホルモンの分泌や卵巣の機能に悪影響を及ぼします。その他に、無理なダイエット、過度の運動、運動不足、過労、睡眠不足などもホルモン分泌の乱れを招く原因となります。

このように女性ホルモンは女性の健康を守ってくれる一方で、不調をもたらすこともありますが、ホルモンバランスの変化や不調の原因を知っていれば、先回りして対処できるのが女性の強みともいえるのです。

月経サイクルと 2 つの女性ホルモンの働き

女性の体は 2 つの女性ホルモンの影響を受けながら毎月一定のリズムで変化をくり返します。月経から排卵までの卵胞期はエストロゲンが大量に分泌されるため、体も 心も好調な時期。排卵から月経までの黄体期はプロゲステロンが優位になり、むくみや肌荒れ、イライラなどの不調を感じやすくなります。

女性ホルモンを味方につけて快適に過ごす

女性ホルモンの影響に逆らうのではなく、女性ホルモンがつくり出す状況に合わせた暮らし方をすると、毎日の生活がもっと快適に !

SELF CARE 1 冷え対策は万全に

冷えはホルモンバランスを乱すだけでなく、冷えによる骨盤内のうっ血(血液の滞り)があると、月経痛の痛みが強く出ることもあります。普段からお腹や腰回りを冷やさないようにすることが大事です。冬場の薄着、夏場の冷房によ る冷えに注意し、冷たい飲食物の摂り過ぎを避けるようにしましょう。 入浴や足湯、軽い運動、ストレッチなどで血流をよくするのも冷え対策に有効です。

SELF CARE 2 ストレスと上手につき合おう

ストレスはホルモンや自律神経のバランスを乱し、様々な不調や病気の引き金になります。ストレスをまったくなくしてしまうことは難しいものですが、上手につき合っていくことはできます。がんばり過ぎない、完璧を目指さない、クヨクヨ悩まない、ストレスのもとと距離をとるといった工夫により、日々のストレスコントロールを心がけ ましょう。 特に不調の起こりやすい時期(黄体期、更年期など)には無理なスケジュールを避け、意識的にリラックスできる時 間を確保しましょう。趣味というほどのものでなくても、自分が心地よいと感じられるものを複数もつようにすると、気持ちの切り替えに役立ちます。手軽にできるリラクゼーション法として、深呼吸(腹式呼吸)もおすすめです。

SELF CARE 3 質のよい食事を心がけよう

年齢に応じ、必要な栄養とエネルギーを摂取することが大切です。特に体をつくるもととなるタンパク質、月経で 失われがちな鉄、骨を丈夫にするカルシウムは全年代で不足傾向にあるので、しっかり摂るように心がけましょう。鉄を効率的にとり入れるには、肉や魚、卵などの動物性食品と、鉄の吸収をよくするビタミンCの豊富な野菜や果物を一緒に摂るとよいでしょう。油脂や油脂加工食品の摂取は控えめにし、n-3 系の油(青魚に多いDHAやIPAなど)、オリーブ油など体によい油を選ぶようにしましょう。大豆や大豆加工食品に含まれるイソフラボンは、体内でエストロゲンに似た作用をする「フィトエストロゲン(=植物性エストロゲン)」の一種で、女性の健康をサポートしてくれます。

SELF CARE 4 適度な運動を習慣に

適度な運動はホルモンバランスを整え、月経に伴う不調や更年期の不定愁訴の改善に有効です。また、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防やストレスの解消、冷えや不眠の改善など様々なよい効果を得ることができます。おすすめは、軽く汗ばむくらいの有酸素運動。ウォーキングやヨガ、 ジョギング、水泳など無理せず続けられるものをみつけて習慣化しましょう。

有酸素運動を行うと呼吸が深くなり、血行もよくなって自律神経の働きが整い、ホルモンバランスもよくなります。

SELF CARE 5 睡眠はしっかりとろう

睡眠不足は女性ホルモンの分泌に影響し、逆にホルモンバランスの乱れが 不眠を引き起こすこともあります。毎日6 時間は睡眠を確保して、しっかり体と脳を休めましょう。最近はスマホやパソコンの使い過ぎで睡眠の質が落ちて いる人が増えています。少なくとも就寝の1時間前にはIT機器から離れるようにしましょう。また、休日の寝だめは避け、できるだけ規則正しい生活を心がけましょう。就寝の2時間前くらいにぬるめの湯にゆっくり浸かり、体を温めるとスムーズな入眠につながります。寝る前のリラックスタイムに温かいハーブティーを摂るのもおすすめです。

SELF CARE 6 自分に合う婦人科をみつけよう

不調を感じたら、我慢し過ぎないことも大切です。月経のトラブルや更年期の不定愁訴などが続く場合は、一人で悩まずに婦人科に相談しましょう。月経痛や月経不順の場合、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮頸がん、子宮体がんなどの病気が隠れているケースもあるので、きちんと検査を受けて原因を確かめておくことも大事です。特に女性特有のがんについては若い世代からリスクが高くなります。子宮頸がんは 20代から増加しているため、20歳以上で2年に1回を目安にがん検診を受けることが推奨されています。また乳がんでは、自治体の多くが40歳で受診の案内を送るようですが、20~ 30代のうちもセルフチェックをしてください。

PMS は改善できます

月経前症候群(PMS)は、月経前に起こる様々な不調を指します。症状は、イライラ、落ち込み、 集中力の低下といったメンタルなものから、肌荒れやむくみ、乳房の張り、眠気、便秘、頭痛 など身体的なものまで多岐にわたります。この時期はなるべく体を休めるよう心がけましょう。 また、パートナーなど周囲の人に事情を話して理解を得ることで、症状が楽になることもあります。症状がつらい場合は婦人科に相談すると漢方や低用量ピル*などによる治療や生活指導をしてもらえます。

*低用量ピル(OS) …..女性ホルモン剤の一種で、エストロゲンとプロゲステロンを組み合わせた薬。PMSの他、 月経不順、子宮内膜症に伴う痛みの改善にも用いられる。

いりたに内科クリニック院長
入谷 栄一 いりたにえいいち
総合内科専門医、呼吸器専門医、アレルギー専門医。日本メディカルハーブ協会理事。東京女子医科大 学呼吸器内科非常勤講師。在宅診療や地域医療に力を入れる他、補完代替医療やハーブ、アロマに造詣が深く、全国各地で積極的に講演活動も行う。著書に『病気が消える習慣』、『キレイをつくるハーブ習慣』(経済界)など。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第50号 2019年12月